パイロット目線で解説!ロシアが借りパクした【リース航空機】の行方

ネバギバ生

パイロット目線で解説!ロシアが借りパクした【リース航空機】の行方

地球の向こう側ではプーチン閣下が大暴れで痛ましい状態になっています。

西側の経済制裁絡みでロシアと他国間の国際線運航が完全に止まりました。

勿論、ウクライナ侵攻についての引き金を引いたのは閣下ですが、経済制裁の引き金が具体的にはどの様に引かれたのかについて、まとめてみました。

※表紙のご説明:【借りパク】ならぬ【串パク】です。それがどうした!(笑)

  1. まずはコレまで(ウクライナ侵攻後)の経緯のおさらい
    1. 2022年2月 ロシア上空の飛行に関するする動きが徐々に活発になる
    2. 2022年2月25日 EUが制裁パッケージ第二弾決定 ※SWIFT排除はまだ
    3. 2022年2月26日  SWIFTからの排除を決定
    4. 2022年2月28日 EUが制裁パッケージ第三弾決定 
    5. 2022年2月28日 対抗措置として、ロシアが欧州航空会社の発着および領空通過を禁止
    6. 2022年3月6日 国際線運航停止(ロシア⇒海外)
    7. 2022年3月8日  国際線運航停止(海外⇒ロシア)
    8. 2022年3月10日  中国がロシアに対する部品の供給を拒否している事が発覚!
    9. 2022年3月11日  ロシア政府は同国から撤退する外資系企業を接収・国有化する案を策定
    10. 2022年3月13日 バミューダ航空局がバミューダ籍のロシア機の耐空証明を停止
    11. 2022年3月14日  【何でもあり!】的な法律がまた一つ完成
    12. 2022年3月23日  ロシア側が一転、航空機リース会社への補償申し出
    13. 2022年3月24日  ロシア側の動きに反して、リース会社は保険金請求へ
    14. 2022年3月24日  フィンランド国鉄、ロシア向け列車運行を停止へ
  2. 経緯はこれ位にして現場にいる人間から軽く突っ込ませて頂きます
    1. 単純消耗品は暫く大丈夫かも!
    2. でもやっぱり大丈夫じゃないかも!
    3. 昔と違って、オンラインの整備マニュアルが大丈夫じゃない!
    4. 日々の整備の他に重整備は結構外国に委託してることが多い
    5. 航空機も今や、コンピューターの集合体!バージョン更新不可は困る
    6. 更にバージョン更新だけでなく、日々の運航の為のデータ入手もメーカー経由になっている。
    7. 国内運航を続けたとしても、無保険状態での運航にならざるを得ない
  3. 突然だけど大事なので【再保険って何?】について説明します
    1. 2022年2月16日の【再保険】関連の記事
    2. 2022年3月4日の【再保険】関連の記事
  4. チョイまとめ
  5. 借りパク【リース航空機】は今後どうなる?
  6. オマケ:頑張れ!日系航空機リース会社
    1. SMBC Aviation Capital
    2. AVOLON:大手の一つでオリックスが30%出資
    3. 東京センチュリー
    4. 三菱HCキャピタル
    5. みずほリース
  7. オマケ:マレーシア航空17便撃墜事件
  8. オマケ:ベラルーシの旅客機緊急着陸 2021年4月発生
  9. オマケ:在りし日のAeroflotの機内ビデオです。※まだあるか!、、
  10. オマケ:アエロフロート1492便炎上事故 2019年5月5日
  11. オマケ:ロシアと言えば北方領土問題 まとめ動画どうぞ!
  12. 今回の件とは関係ないけど、ロシア関連?記事は書いていました
  13. ロシアとかプーチン閣下とかウクライナについて本やブログで勉強したい人はこの辺からどうぞ!
  14. 最初の記事投稿後の借りパク航空機やロシア航空業界の動きについての追加はコチラ
    1. 2022年6月27日 ロシアに残された欧米の飛行機は、修理が困難なまま「空の事故」のリスクになる
    2. 2022年8月9日 オリガルヒの航空機に欧州令状120億円
    3. 2022年10月19日 ロシア、国産航空機に切り替えへ 制裁で整備困難
  15. その他、パイロット受験・就活に関係ない記事も密かに書き進めています

まずはコレまで(ウクライナ侵攻後)の経緯のおさらい

2022年2月 ロシア上空の飛行に関するする動きが徐々に活発になる

「ロシア上空が飛べない」航空業界が苦悩 2月12日
欧州航空会社、南回りでアジアへ ロシア上空避け  2月26日
ロシアが自国の領空内の飛行制限 日欧結ぶ約20便運航取りやめ 3月1日
ロシア上空の通過回避、JAL&ANAも検討「安全が担保できることが大前提」両社長が明かす 3月2日
ロシア上空の飛行禁止!30年前の「アンカレッジ」、復活も?  3月3日

2022年2月25日 EUが制裁パッケージ第二弾決定 ※SWIFT排除はまだ

EU、ロシアに対する追加制裁を採択、プーチン大統領も対象に

運輸では、航空・宇宙産業関連の商品と技術の輸出を禁止する。EU理事会によれば、ロシアの商業用航空機の4分の3はEU、米国またはカナダで製造されており、航空機の販売のみならず交換部品の供給を止めることで、ロシアの航空産業に大きな打撃となる。

2022年2月26日  SWIFTからの排除を決定

EU、ロシア7銀行のSWIFTからの排除を採択、3月12日開始 

恥ずかしながらSWIFTについては僕自身が簡単に記事にしている。あくまで面接向けです!
関連記事:『SWIFTとは?』の面接での答え方!【例文有り】時事問題回答時の注意点

2022年2月28日 EUが制裁パッケージ第三弾決定 

EU、対ロシア制裁第3弾を採択、中銀への追加制裁や航空機の発着禁止

ロシアの航空会社が運航する航空機(コードシェア便を含む)、ロシア籍の航空機、ロシア国籍者・法人が所有・チャーター・管理する航空機(航空機の国籍を問わず)によるEU域内の発着と領空通過を原則禁止した。こうした航空機の運航制限に関しては、ロシアも対抗措置(2022年3月1日記事参照)に出ていることから、EUとロシア間だけでなく、ロシア上空を通過するEUと日本を含むアジア間のフライトも一部運休になるなど、既に影響が出ている。

2022年2月28日 対抗措置として、ロシアが欧州航空会社の発着および領空通過を禁止

ロシア、欧州の飛行機発着を禁止、対ロ制裁への対抗措置

ロシアの上空を飛べると、ヨーロッパ⇔アジア間がより短くなるので飛びたいですが、既にロシアがメーカーからの支援を受けられない状況ですから、ロシア上空を飛んでいて万が一何らかの緊急着陸した場合に二度と飛び立てない可能性も高くなってきています。

その後、保険が利かなくなる事でロシアの上空も飛行場も完全に実質的にも使えなくなりました。

2022年3月6日 国際線運航停止(ロシア⇒海外)

ロシア政府はロシア国内から外国へ向かう便の運航を停止する様に、ロシア国内の航空会社に勧告しました。

これはロシアの航空会社のリース機が海外で差し押さえされるコトを回避する対策でした

ロシア当局、ロシアの航空会社に外国への運航停止を勧告 リース機差押えを回避より↓↓

上記TRAICYの記事によると、外国の航空会社によるロシアの航空会社へのリース機は約515機あり、世界全体のリース機の約3.2%に相当するという。

ロシア、外国からリースの航空機を接収へ プーチン氏が法案署名より↓↓

外国製の機材のうち85%はリース会社が保有しており、その価値は合計124億ドル(約1兆4700億円)に上るという。

ロシアの航空会社はエアバス機305機、ボーイング機332機を運用する。
このほか、ボンバルディアやエンブラエル、ATRなどの西側メーカーが製造したリージョナルジェット83機も保有する。
ロシアの航空会社で運用中の機材のうち、ロシア製は144機にとどまる。

永遠に戻らない恐れ、ロシアのリース航空機1.2兆円-ABS市場動揺もより↓↓

515機中リース会社が回収できたのは20機だけ

2022年3月8日  国際線運航停止(海外⇒ロシア)

外国からロシアへ向かう便の運航も、この日以降停止している。

2022年3月10日  中国がロシアに対する部品の供給を拒否している事が発覚!

ロシア、航空局職員を解雇-リース航空機の国外返却拒む計画漏らす

航空機100機余りがすでにロシアで再登録され、ボーイングとエアバスが提供を拒んでいた予備部品を国外(ほぼ中国)で探している(けど拒否されて上手くいっていない)とロシアの航空当局の高官が漏らし、それをロシア国内の複数のメディアが報じた。↓↓詳しくは16日の記事で、、

『航空機の部品くらい横流ししてくれればイイじゃん!』的なロシア航空局?ロシア政府?のチョット空気が読めていない不満が、中国のイケずな姿勢のリークに繋がったのでは???と考える人もいます。
結果的には、このリークがロシアの孤立を際立ててしまったからなのか、航空局の人は解雇になったようです。よーわからん国だ。

でもって、中国もできればアメリカや欧米からロシアへの制裁なんて協力したって自分達に少しもメリット無いので裏でロシアに救いの手を差し伸べたいけど、航空機部品などの横流しが発覚すれば、横流しした中国の航空会社が二次制裁を喰らうので流石にソコまではやらないと決めた様です。

※正式な部品は横流ししませんが、非正規部品の製作・供給をロシアから高額で受注して納品する事が一応可能ですが、消耗品部品があればロシアの借りパク航空機が飛び続ける事ができるワケでも無いので、難しそうです。

更にこの航空局高官は、2月末以降ロシアの航空会社はアエロフロート航空機80機を含む約180機の航空機を外国からロシア国内に移管したと述べた様です。 ※その理由は13日の記事参照

2022年3月11日  ロシア政府は同国から撤退する外資系企業を接収・国有化する案を策定

航空関係では無い記事になりますが、ロシアが【何でもあり!】的な法律を作り始めました。

ロシア、撤退する外国企業を接収へ-5日以内の営業再開か売却迫る

2022年3月13日 バミューダ航空局がバミューダ籍のロシア機の耐空証明を停止

ロシア航空機、バミューダが耐空証明停止-SMBCはリース契約解除

ここで少し航空機の型式証明耐空証明について簡単に説明します。

航空機をメーカーが設計・開発して一度型式証明を得られれば、その後は設計図に沿って作られれば多分安全に飛ぶだろう!みたいに概ね認めて貰えます。

一方、耐空証明は車でいう車検にも似ていて、所有者が保有する車が本当に使用に耐える状態なのかを検査して証明書を維持し続けなければイケない仕組みです。
※車検を有しない車は駐車しておくか、私有地内を走る事しかできません。空には私有地が無いので(たぶん)駐機しておくしかなくなります。飛べなくなります。

ロシアの航空会社が運航する航空機は、ロシアの航空機が購入して運航する場合もあるでしょうし、航空機リース会社が保有している場合もありますが、どちらも税金対策の為に英領バミューダに航空機を所有するペーパーカンパニーを立て、航空機をバミューダ籍として登録する場合が多いようです。

ですから、登録された航空機に耐空証明があると認めるのはバミューダの民間航空局になるワケです。

13日の段階で、ロシアの航空会社が運航する航空機は、既にメーカーからの支援がストップしているので、それを元に耐空証明が無いと判断したのです。

『この航空機をバミューダ―に登録する限り、バミューダ航空局は状況が変わらないうちは耐空証明は停止し続けるので、今の状態ではこの航空機は飛べません!』と言われたワケです。

それに対してロシア側が『そんな事言うなら、バミューダ籍からロシア籍に変えて、ロシア航空局が耐空証明を出せば法律的には飛んで良くなる!』という手続きを始めているという状態です。

2022年3月14日  【何でもあり!】的な法律がまた一つ完成

ロシア、外国からリースの航空機を接収へ プーチン氏が法案署名

プーチン大統領は14日、国営アエロフロートなどロシアの航空会社に再登録を含む航空機の保持を認める法律に署名しました。

『この法律により、ロシアの航空会社は外国からリースした航空機を手元に置き、国内路線で運航することが可能になる。』⇒ほんと凄い力技!法律を勝手に作れる専制国家はアメージング!

『一方、外国企業はロシア政府の承認なしにリース機を回収するのが困難になる。』と上記記事にありましたが、このコメントは適当に作られた正当でないロシアの法律に則れば、、、という事だけどねぇ~

※不法に占拠した日本の国土を返す返さないの話をしている時に、領土の割譲禁止条項がロシアの憲法に最近入ったから絶対無理って言ってくる理論にそっくり。この国に法律も憲法も無いと考えるべきだと思う。↓↓↓

ロシア改憲の領土割譲禁止、最高禁錮10年の法案準備

銀行でも何でも、お金を貸す方が有利な条件になってます。
航空機のリースについても、何かあったらスグにリース契約が解除できる形になってるのは素人でも理解できます。

それを無理矢理オーバーライドする様な、借りてる飛行機を勝手にロシア籍にして引き続き保持してオッケーな【借りパク法】が着々とできています。

法律はリースされた航空機について、外国の所有会社に返却するかどうか国の委員会が決めることができる??と規定しちゃいました。
引き続きロシアの航空会社が保持する場合、リース代金はルーブルで支払って良いと規定しちゃいました。

2022年3月23日  ロシア側が一転、航空機リース会社への補償申し出

ロシア、航空機リース会社への補償申し出-制裁違反の回避手段も探る

ロシア、航空機リース会社への補償申し出-制裁違反の回避手段も探る
ロシアのサベリエフ運輸相は22日、同国の航空事業者に貸し出した航空機が戻らなければ多額の損失を被る外国のリース会社との関係円滑化に向け、ロシア側が事実上接収した形のジェット旅客機のオーナーに補償を申し出た。

『返還するつもりはない。(なぜなら返還してしまうと)航空機がない状態に置かれるからだ』とのロシア運輸相の発言は、苦し紛れというか、自己中というか、自国中というか、とにかくそんな感じです。

今頃になって、ロシアが補償がどうのこうの言って来ても、それに応じてリースを続行してしまうとリース会社自身が西側の制裁違反として不利益を被ってしまうので、24日の記事の様な流れになります。

2022年3月24日  ロシア側の動きに反して、リース会社は保険金請求へ

外国リース会社、保険金請求に動く-ロシアによる航空機「接収」で

外国リース会社、保険金請求に動く-ロシアによる航空機「接収」で
ロシアはウクライナ侵攻で制裁を科される中、外国所有のジェット機約800機を国内籍に再登録したが、これにより航空機を奪われた形になったリース各社が保険金請求に動いている。

2022年3月24日  フィンランド国鉄、ロシア向け列車運行を停止へ

フィンランド国鉄、ロシア向け列車運行を28日に停止へ

陸の便も止まってきました。

経緯はこれ位にして現場にいる人間から軽く突っ込ませて頂きます

単純消耗品は暫く大丈夫かも!

まずは、
『タイヤやネジ?などの消耗品的な代替部品がない状況では安全性にも懸念が出てくるやろなぁ~
無理に飛ばしたりすると、ロシア国内での事故のリスクも高まるやろなぁ~』

『消耗品もどれぐらいロシアに在庫があるのやら、、』
などが、とりあえずの感想ですよねぇ~

でも、そういった単純な部品については【共食い】といって、スクラップ的な航空機から取って来る方法もあって、部品を取る様の部品庫の様な航空機の比率を徐々の増やして行けばある程度の期間は国内運航できちゃう感じもします。※整備が本業じゃないので、細かいことはわかりませんが、、

でもって、よくよく考えると『やっぱり無理だろう!』と思ってしまう点が幾つか出てきます↓↓

でもやっぱり大丈夫じゃないかも!

例えば、Iphoneの中に村田製作所の部品が使われていても、一度アップルが全部統合して【Iphone】という商品にして販売しているのと同様に、旅客機も全ての部品をメーカーであるボーイング、エアバスが一括して管理しています。

売ったらおしまい!的な商売ではなく、プリンター売ったらインクで儲ける!的な、サブスク的な商売です。

これでロシアの国内線が数か月も飛び続けてしまう事はメーカーの威信にかけても徹底的に阻止しなければなりません。

やっぱり航空機部品が第三国経由でロシア国内に継続的に入って行かなければ、必要な部品が不足して飛行不能に陥るのは、結構早いと思います。

超超体感ですが、一か月持たないのではないかと感じます。
どなたか整備さん、教えてくださーい!

昔と違って、オンラインの整備マニュアルが大丈夫じゃない!

パイロットが使う航空図もひと昔前までは、紙媒体でした。
毎回毎回の改訂版が紙で届くと、古いページを破って新しいページを各自のバインダーに挟み直す作業は、本当にはげそうになるキツイ単純作業でした。
※普通の人はハゲはじめ、ハゲかけてる人は更にハゲる作業です。
※奥さんや子供に極秘裏に外注している人もいました(笑)

しかし、最近は航空図のみならず、ほぼ全ての規定類がIPADの中に入り、改訂作業も指一本で完了します。

そして、同様に整備部門にも同様のことが起きています。

沢山の整備マニュアルが全て印刷されて、整備さんの部屋に並べられて、メーカーから紙で送られて来る改訂版の差し替え作業のかなりの部分がオンラインマニュアル化しています。
ですから、何か故障して作業が必要になった時には既に印刷してある整備マニュアルを持って行くのではなく、常に最新であるはずのオンラインマニュアルの当該部分を印刷して現場に向かうことが通常手順化していると聞きます。

そして、今回ロシアの航空会社に対してボーイングなどのメーカーはオンラインマニュアルを停止しているハズですから、停止直前にロシアの航空会社の整備さんが全て印刷していたとしても、少しづつ最新の正しい整備作業が出来なくなります。

タイヤの擦り切れ具合ならば、目視で判断できますが、整備処置の内容が最新か?最善か?はオンラインマニュアルを見れなければ判断できるハズがありません。

現場の整備士さんは、こんな状態で出発前の航空機に【GOサイン】を出せるのでしょうか? 
それとも会社や国から【GOサイン】を出す事を強要されるのでしょうか?
少し考えただけでも、気持ちが暗くなります。

日々の整備の他に重整備は結構外国に委託してることが多い

日本のJAL,ANAの様に整備技術が充分に高い会社でも、数か月~数年に一回の重整備を中国や台湾に委託している場合もかなり見受けられます。

ロシアの場合はドイツなどの整備会社が結構受託していると聞いた事があります。(噂レベル)

もし、そうだとすれば重整備とかをスグに自国で賄う体制を作るのもかなり厳しいと思います。

航空機も今や、コンピューターの集合体!バージョン更新不可は困る

長年ボーイングで飛んでて、エアバスに移行する訓練を受ける乗員は驚きます。

マニュアルの至る所に【コンピューターリセット】する手順が出てきます。
【コンピューターリセット】って、まぁ簡単に言えば【再起動】の事です。
何かシステムに故障が発生したら、そこのコンピューターを再起動して様子を見るという手順がかなり多いのです。
特に地上で何か不具合が発生して、部分的な対処で治らなくて、更にお客さんも乗ってない時は『一度全部電源を落としてみよう!』が、結構正解だったりしました。

IphoneのiOSのバージョンも更新されるのと同様に、コンピューターの集合体でもある 旅客機内には多くの更新が必要なシステムを含みます。
毎日の様に航空機のどこかのシステムがバージョンUPされているイメージです。
というワケで、ソフトウェアの更新も不可欠で、ボーイングやエアバスといったメーカーのサポートが受けられなくなるというのは相当に致命的です。

更にバージョン更新だけでなく、日々の運航の為のデータ入手もメーカー経由になっている。

メーカーのサービスはサブスク的になってると書きましたが、日々の運航に必要な上空の風のデータ等もその一つです。

飛行計画書から手打ちでも上層風を入力できますが、長距離フライトになるとパソコンにソフトを入れる時と同じ様にダウンロードしてインストールして簡単にナビゲーションデータに反映できる様になっています。

こういったデータはメーカーが気象会社などから買って、航空会社に提供して、航空会社はデータ料金をボーイングなどのメーカーに支払う形になっていると聞いたことがあります。

なので、ボーイングからの支援が得られない状態だと、昔ながらの手打ち方式になります。

その場合の上層風を含む気象データはJEPPSENから購入するのだと思いますが、JEPPSENが制裁に加わっているかは不明です。

※と思ったら、JEPPSENはボーイングの子会社になっていました。知らんかった~ ↓↓↓

というワケで、上層風のデータを入手するのはかなり厳しそうですが、かなり大まかに入力しておいて、その分少し多めに燃料積んで運航する方法も全然ありです。
何とかなります。

次にカーナビにおける地図データにあたる航法無線施設などの情報も28日毎に更新して、機上のナビゲーションシステムに反映されます。

これについてもロシア国内の運航だけであれば、何とかなりそうですが、やっぱり全世界のデータを集めてメーカー経由でデータ更新ができるので、メーカーの支援が無いとずっと古いデータのままで運航しなければなりません。

上層風の場合とは違って、明らかに最新でなく、正しくない可能性が高いデータを元に運航するワケにはいきません。

整備さんの時同様に、この状態で機長は運航する事を会社や国から強要されるのでしょうか?
コチラもまた、少し考えただけでも、気持ちが暗くなります。

国内運航を続けたとしても、無保険状態での運航にならざるを得ない

どんな国の航空会社でも補償額の差はあれ、事故が起きた時の為に保険が書かています。

でも、今まで書いて来た状態ではロシアの国内航空会社の借りパク状態での運航に保険会社が付きそうにありません。

無保険状態でも良いから、どうしてもロシア国内を移動したいお客さんってどれだけいますかね?

これこそ正に【ロシアンルーレット状態】です。

飛行機は怖いから車で移動しようと思っても、ロシアには高速道路網があまり発達していない。
なので、鉄道での移動になるが、今回の制裁で鉄道部品も同様に止められている。困ったね。

突然だけど大事なので【再保険って何?】について説明します

イギリスのロイズという再保険の組合がロシア向けの保険を受けない決定をしました。
ロイズはシティーオブロンドンという金融センターの中核にあります。
ロイズの再保険組合が保険を引き受けないとどうなるかというと、各国の保険会社が保険を引き受け無くなります。
一般人・一般会社などは保険会社の保険商品を購入しますが、保険会社もリスク分散で更に【再保険】をかけるワケです。
ロイズ等再保険市場を使えないと、自分の会社でリスクを全部引き受けなくてはならなくなります。

その再保険の仕組みで最も大きいモノが、P&Iと言われる船主の責任保険です。
自動車保険と同様に、船を持っている人が船の事故を起こした場合、保険会社が賠償責任を負います。
そしてJAFに該当する仕組みもP&Iが持っています。
事故が起きるとPIがまず引き受けて、その後の様々な対処を行う。
船主の責任保険、それと船荷保険がセットになったのがP&I保険です。

今回西側の経済制裁により、この保険に入れない状態になったので、まずロシア向けのタンカー運航が停止しました。
更にロシアの輸送船は無保険なので、各国の港に入れない。
この様に次から次へと物流が止まる。

これに並行して飛行機も同じく、ロシアの航空機も再保険が受けられないので、保険無しになってしまって、リース契約が全解約の流れになりました。

関連記事:再保険会社の世界市場シェアの分析
※ウォーレン・バフェット氏のバークシャーハサウエイも出てきます。
関連記事:日系損保、「再保険」市場トップ10に3社 収益源多角化狙う
※日系企業も頑張ってます。

2022年2月16日の【再保険】関連の記事

ロンドンの海上保険会社、ウクライナ周辺海域を高リスクに指定

2022年3月4日の【再保険】関連の記事

英、保険市場からロシアの航空企業排除へ 制裁強化

再保険市場はロイズだけじゃないけど、ほぼロイズが牛耳っている感じがヒシヒシと伝わります。
『イギリス怖いっすよ~』(笑)

日本船主責任相互保険組合HPより
EUの対ロシア制裁 3月4日
EUの対ロシア追加制裁 3月15日

チョイまとめ

この記事の一番上に戻って見て欲しいのですが、ロシアが国際線運航停止したのは3月6日です。
再保険市場からロシア企業を排除した二日後です。

ロシアのウクライナ侵攻に対する直接的な軍事介入を西側はしていませんが、軍事介入に変わるマジな経済制裁をしました。
そのうちの空運、海運、引いては物流全体に被害を与える為の方策を【再保険市場】を通じて喰らわした構図がわかって貰えたのではないでしょうか?

「ロシアにはもう行かない」 各国コンテナ船が相次いで航路を停止、混乱はいつまで続くのか?

借りパク【リース航空機】は今後どうなる?

戦争も今後どうなるのか分からない状態で、愚パイごときに今後のことが分かるハズも無いですが、、、、、

【西側の国】と呼ばれる国は超怖いです。
プーチンも怖いですが、それと同じかそれ以上に怖い国なのです。
怖いだけでなく、結構賢いのです。
プーチン閣下が苦し紛れの法律を作っているのとは次元が違って、誰からも文句の出ない様なそれっぽいルールを作って、それを厳かに運用し続けて良いとこ取りし続けています。

ロシアとウクライナの国力が削がれ、中国とロシアの連携にクサビを打ち込み、【西側の国】としてのメリットとデメリットの足し算を超冷静にしながら動いている人がきっといるはずです。

プーチン閣下がウクライナに親露政権を打ち立てようとしたのと同様に、【西側の国】はロシアに反米・親中でない政権が立つことを狙っているハズです。

そして、今後も経済制裁をロシアが経済的に破綻するまで継続して、破綻処理の一環としてロシアの資源や穀物に関する権益をオリガルヒなどから奪い取って、『パクリっ』する方法をみんなで話し合っていると思います。

もしかしたら【リース航空機の借りパク】なんかは可愛いモノなのかも知れません。

そういった大きな流れも考慮した上で、今ロシアに借りパクされている【リース航空機】が今後どうなるか?を考えると、、、

①借りパク状態での国内運航は一か月前後で無理になる。
※国家の威信?をかけて国内に留めたけど、海外に出して差し押さえさせちゃった方がスッキリしたのでは??と思っちゃうくらいです(笑)
②その後は戦争の状態にもよるが、戦後のことをロシアが考えるのであれば運航できない状態のまま、西側が納得する相応のリース料を払い続ける事になる。 
③リース料も払わない状態までロシアが頑なになる場合には、西側の経済制裁も更にマジになるワケで、ロシアを経済破綻するまで追い込む事になり、結局【リース航空機】はその時に結局差し押さえられる。
④それ以外の核が飛び交う恐ろしい状況になったら、もう予測不可能かつ、もう【リース航空機】なんてどうでも良くなる悲惨な状況に、、、

とにかく、なんだかんだで通常状態に戻ったとしても、以前は【リース航空機】の3%程度がロシアの航空会社にリースされていましたが、この比率はどう変わるのでしょうか? 
リースする会社はいるでしょうか?
いたとしても、ロシアの航空会社へのリース料はどんな料金設定になるのでしょうか?
もし、超割高価格でリースする会社がいたとしても、運航に関わる保険を再保険市場は引き受けるのでしょうか?
引き受けるにしても、どんな価格設定になるのでしょうか?

どう考えても前途多難過ぎる、、、

オマケ:頑張れ!日系航空機リース会社

近年、日本の会社も航空機リース業界にドンドコ進出してます。

「危機は乗り切れる」航空機史上最悪の状況が続く中、それでも生き残る日系航空機リース4社はこれだ 2020年8月19日

SMBC Aviation Capital

SMBC Aviation Capital

対ロ航空機リース事業損失、日本の銀行への影響限定的=金融庁 2022年3月25日
※ロシアからの支払いは滞るだろうから、当然心配はされている。

AVOLON:大手の一つでオリックスが30%出資

AVOLON

アイルランドの大手航空機リース会社「Avolon Holdings Limited」の株式取得を完了 2018年11月06日オリックス株式会社
※出資はコロナ直前2018年、タイミング悪いといえば悪い。

オリックス、航空機リースと空港コンセッションでコロナ影響が拡大し2Qは減収減益2020年11月14日
※コロナもウクライナ侵攻も航空機リース会社には超逆風。

航空機リースのアボロン、対ロ制裁に伴う支払いへの影響を懸念 2022年2月25日

東京センチュリー

【東京センチュリー】米ACGを3200億円で買収、M&Aをテコに航空機ビジネス拡大へ 2019年

東京センチュリーが一時急伸、航空機リースの米子会社がエアバス社に60機を発注 2022/01/04
エアバス社に対しA220 Family20機、A320 neo Family 40機の計60機を発注!!
※わ~い 株価上がった~

※わ~い 株価下がった~

三菱HCキャピタル

当社グループが有するロシア、ウクライナ向けの債権に関するお知らせ 2022年3月7日

ロシアにもウクライナにもリースして無かったって、、、良かったね エンジンのみが4基(笑)

みずほリース

丸紅とみずほ系、米航空機リースを1900億円で買収 2019年11月6日

丸紅とみずほリース共同出資の米社、ロシアの航空会社から2機回収2022年3月16日

オマケ:マレーシア航空17便撃墜事件

ウクライナ東部では、航空機の撃墜事件も過去に発生しています。

まずはウィキペディアより↓↓

マレーシア航空17便撃墜事件 2014年7月17日 

この撃墜事件は、ドンバス戦争におけるシャフタールスクでの戦闘中に、親ロシアの反政府勢力によって支配されていた地域で起こった[8]。航空機との通信が途絶えた直後、ドンバス分離主義の指導者は人民兵からの報告としてウクライナ軍An-26輸送機を撃墜したと主張した[9]。グラボベ近郊に落ちたその残骸が民間旅客機だと明らかになるや、分離主義者はこの主張を撤回して一切の航空機撃墜を否定した

↑↑↑もう状況からもバレバレの主張

マレーシア航空機撃墜、「ロシア高官の指示」=国際捜査チーム 2019年11月15日

ウクライナにおけるマレーシア航空機撃墜事件 日本の外務省HPより 

オマケ:ベラルーシの旅客機緊急着陸 2021年4月発生

ベラルーシで8週連続の抗議デモ 1日で300人超が拘束 2020年10月6日
事件の発生に至る前年の様子がわかります。

ベラルーシの旅客機緊急着陸は「空の海賊行為」 アイルランド政府が非難 2021年5月24日
米国、ライアンエア機の強制着陸でベラルーシ非難-EUは制裁も 2021年5月24日
ベラルーシ、旅客機を緊急着陸させ反体制派拘束   2021年5月24日
航空各社がベラルーシ上空の飛行中止、ライアンエア便の「乗っ取り」非難  2021年5月26日
航空会社各社も声明を出しました。

【解説】 戦闘機に航路変更を迫られたら、旅客機はどうすればいいのか  2021年5月26日

ロシア、欧州航空2社の飛行計画を拒否 ベラルーシ避けるルート変更認めず  2021年5月28日
※ロシアがベラルーシを援護射撃?しています。

ベラルーシ拘束記者、「涙のインタビュー」で大統領賛美 「拷問の結果」と父親 2021年6月5日
※賛美するか?ほんとヤバイ国です。

ベラルーシでの強制着陸、「パイロットに選択肢なかった」 ライアンエアーCEOが説明  2021年6月16日 ※ベラルーシ当局の無理矢理感が凄まじい!

旅客機の強制着陸で「ルビコン川」渡ったベラルーシ その先に待っていたのはロシア?  2021年6月16日

オマケ:在りし日のAeroflotの機内ビデオです。※まだあるか!、、

オマケ:アエロフロート1492便炎上事故 2019年5月5日

まずはウィキペディアより⇒ アエロフロート1492便炎上事故

動画もどうぞ!↓↓

オマケ:ロシアと言えば北方領土問題 まとめ動画どうぞ!

今回の件とは関係ないけど、ロシア関連?記事は書いていました

台湾大手エアライン自社養成ボルシチ君の半生とオーロラな夜

ロシアとかプーチン閣下とかウクライナについて本やブログで勉強したい人はこの辺からどうぞ!

北海道大学のロシア研究の権威の本

ロシア関係の研究者でもあり、貿易関係の仕事もしている服部さんのブログと本

ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ 

次はウクライナ侵攻後、テレビ出まくりの小泉さんの本

最初の記事投稿後の借りパク航空機やロシア航空業界の動きについての追加はコチラ

2022年6月27日 ロシアに残された欧米の飛行機は、修理が困難なまま「空の事故」のリスクになる

ロシアに残された欧米の飛行機は、修理が困難なまま「空の事故」のリスクになる

2022年8月9日 オリガルヒの航空機に欧州令状120億円

オリガルヒの航空機に押収令状 120億円相当、米当局(産経新聞)

2022/8/9 08:19

2022年10月19日 ロシア、国産航空機に切り替えへ 制裁で整備困難

ロシア、国産航空機に切り替えへ 制裁で整備困難

国際線を飛ぶと出先で差し押さえされちゃうので、国内線だけで使用していたボーイング機、エアバス機の運航も徐々に部品などの問題で飛べなくなっていくので、国産旅客機に切り替えていくワケです。

国内に旅客機を作る技術がある国で良かった。そうじゃないと国内に旅客機が一機も飛ばない事になる、、ロシア国内をバス電車のみで移動は明らかに辛い(笑)

武器を作る為の半導体が入手できない状態で、航空機を作る為の半導体などは大丈夫かな???

その他、パイロット受験・就活に関係ない記事も密かに書き進めています

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