パイロットとして入社するなら大手か?すぐ飛べる中小か?問題【航大生・私大生向け】
突然ですが、就職するなら親会社と子会社どっちがいいですか?
まぁ世の中の多くの企業の場合『勿論、親会社です!』って答える人が大半だと思います。
AmazonとAmazonジャパンならAmazon!
吉野家と吉野家U.S.Aなら吉野家!
サンデーとサンデージャポンならサンデー?
マギー司郎とマギー審司なら、やっぱりマギー司郎なのです。
最近、航大生・私大生の就職先に関する話題の一つとして
『ANA入るとリストラ中で、訓練待ち期間が3年とかあって、そんなんならJALとか中小とかに入って、さっさと経験を積めた方がイイよねぇ~、暫くANAはヤバイかもねぇ~』
がある様です。
実際には、この就職氷河期に卒業前後にまわって来るANAの受験機会を蹴ったり、わざと本気出さなかったりする学生はいないと思いますが、ANAで訓練待ち3年がそれ程ヤバイのかどうかについて書きます。
まず中小航空会社に入るメリット・デメリット
中小・子会社のメリット
地上勤務期間がたぶん短く、入社後早く訓練に投入して貰える。
その為、三半規管(笑)や脳みそが若くてプルプルしているうちに訓練でき、早くから乗務経験を積める。
※自転車と同じで、やっぱり早ければ早いほど飲み込み&定着は早いのである。
当然、乗務開始すれば大手で訓練投入を待ちながら地上職をしている同年入社より、その時点での給料は高くなり、チョイ高めの給料にまだ慣れておらず、お金の使い道に困らない若い時代にソコソコ楽しくお金を使える。
大手よりCAさんの平均年齢がグッと低い(笑)
説明省略(笑)
大手より早く機長昇格の機会が回って来る。
その結果、自分の会社に何かあった時に機長として他社に移れる。
航空業界が戦国時代の様にカオスになった時に強いワケです(笑)
会社の規模が小さいと和気あいあいとした雰囲気が生まれやすい
この辺りの人間関係の濃さは好みもあると思いますが、、、、、
中小・子会社のデメリット
訓練環境、待遇(給料)、福利厚生が大手に劣る。
解説:ソリャーそうだよね、大昔は子会社ってANKとかJAIRとかそれ程多くなかったけど、航空自由化以降設立された新会社AIRDOやスカイマークやソラシド、スタフラは軒並み倒産、再建中にJAL・ANAからパクりされて実質的に子会社状態で、将来に渡ってもほぼ親会社の庇護の元から脱出不可能な状態です。
なぜ大手はそんな状態を維持したいのか?
当然搾取して都合良く使える。この効果が一番デカいのだと思う。
コードシェアして営業力がほとんど無い子会社から席を安く買いたたく。
業績悪くなったらまず子会社をリストラして、できるだけ本体に火の粉がかからない様にする。
ついでに親会社の社員の出向・天下り先として使える。
何かJAL・ANAが悪い会社に聞こえてしまうかも知れないが、コレが普通、コレがビジネス、コレが社会、コレが株によって繋がり決して逆転しようの無い親会社・子会社の関係です。
機種が少ない、または一機種である事が多い。
解説:運航乗務員にとって限定変更訓練は非常にスキルを上げる良い機会であることは、たぶん誰も否定しない所でしょう。
大手は以前は小型機から大型機まで、多くの機材を運航していましたが、上述した様に中小新会社が実質的に子会社状態になって、そことコードシェアなどをして利益を吸い上げる構造になっている為、自社で小型機まで保有できず、結果として自社の運航乗務員の限定変更の機会が少なくなっています。
そして、子会社もまた単一機種を運航する事で整備コストを下げる為に、また会社規模が小さい為に、当然機種数が一つか二つに絞られるコトになり、結果として親会社以上に社内での限定変更訓練の機会がほぼ無くなります。
この点、アメリカなどは例えばJAIRからJALに会社を移っていく様なシステムもありますので、それぞれの会社自体の機種数が少なくても、運航乗務員にはステップアップ時に限定変更訓練の機会が与えられる事になります。
日本の大手であるJAL・ANAは吸収合併でもしない限り、運航乗務員の途中入社の仕組みはありませんので、例えばJAIRからスカイマークへの転職の様な事をしない限り、あまり限定変更訓練を受ける機会は無い状態に航空業界自体がなっていると言えます。
そしてアメリカでの限定変更が転職&ステップUP&給料UPを伴う事が多いのに比べて、日本の大手以外から大手以外の転職は待遇が大きく変わりませんので、そういう意味でも限定変更の機会が少ない国になりつつあると言えます。
企業からすれば、限定変更はコストでしか無いので合理的なシステムとも言えますが、そのコストによって一人一人の運航乗務員のレベルが上がるであろうことも明らかなので、もしかしたら日本の航空会社の顧客は見えない所でコストカットによる運航品質の低下の影響を受けているとも言えます。
※安全マージンがどれだけ大きくなるか、、、は直接コストに出てこないので、そこを重要視した仕組みには自然になる事は無い。限定変更の機会が少ないコトによって安全マージンが下がり、事故やインシデントに繋がったと思われる何か悪い事が起きない限り変わらないでしょう。
またはアメリカの様な制度が航空会社側にとっても全体の人件費が抑えられると判断されるとか、、
とにかく、大手でも最近は少ない限定変更の機会が子会社だとモット少ないのが現状です。
更にちょっと書き足しますが、親会社のパイロットが子会社へ教官・査察などの要因として一時的に出向する事もありますので、大手にいても小型機経験が回って来る可能性は少しあります。
逆は絶対に無いです。
大手行かないと大きな飛行機一生乗れないかもね、、、
上述の通り、日本の大手2社は運航乗務員の途中入社を何十年もしていません。
なので今大手二社以外で大きな飛行機使ってるといえばZIPとか位になると思います。
今後中型機のLCC比率が増す可能性は結構あると思いますが、全体から見た比率はまだまだです。
会社小さいので、大手より倒産する可能性は高い。
大手2社は大きすぎて潰せません。コロナ禍での国による救済度合いを見ても明らかです。
一方、新規参入中だったエアアジアは誰からも救済されずに、消えました。
またJAIRやANA WINGSの様な完全子会社系は倒産しにくいのに対して、その他の衛星子会社は資本比率が低くなるにつれて万が一の時は倒産・強度のリストラの波に遭遇する可能性が高くなるでしょう。
会社が小さいので、初期訓練を終えて副操縦士になるまでに会社が傾くとヤバイ
大手であれば、不景気に見舞われても地上勤務時代が長くなるだけで済みます。
訓練がドカーンと止まりますが、再開後はドカーンと進むので、結果的になんくるないのです。(イキナリ沖縄風)
中小だと訓練中は正社員じゃ無かったりする時代もありました。(今もそんな会社あるか???)
そんな状態で不景気がドカーンと来ると訓練が止まったきり、再開する前に首切りされたり、社員として残ったとしても『君、もう結構年喰っちゃったから、他の部署の正社員やってくれる?』って言われて、パイロットへの道をこのまま諦めて他部署の正社員としてやっていくか、自ら会社を去って不景気後で就職出来ていない沢山のライセンサーに混ざってイチからパイロットの就職活動を年喰ってからやるのかを悩んだりする事もあるかも知れません。
副操縦士時代に所属する子会社が親会社に吸収合併されると昇格訓練がヤバイ
比較的最近ではJEXがJALに、ANKがANAに吸収合併されました。
待遇が一気に改善します。給料UPだヤッホーいと子会社の社員全員が喜んでいる様に外からは見えますが、結構エゲツナイ事も同時に起こってきました。
合併後、子会社で機長職をしていた人は親会社でも機長職をします。
これはヤッホーしか無いです。まぁそれでも窓際機長ですが(笑) 新用語
問題は子会社の副操縦士です。
合併前には、それぞれの会社の入社順などで機長昇格訓練の時期が指定されます。
しかし、合併すると合併直前に親会社の副操縦士になったピカピカの一年生が機長昇格訓練を終えるまで、子会社にいた副操縦士全員は昇格の機会が回って来ないルールになります。
更に、子会社にいた副操縦士さん達の昇格訓練が一度始まると、親会社の教官・査察様たちの理不尽とも言える怖―い怖―い仕打ちが待っているのです。
JEXの副操縦士さん、ANKの副操縦士さん達の昇格訓練突破率は大手の副操縦士さん達が8~9割だとして、それよりも遥かに低い率になります。
会期によって数字は前後しますが、3割とか1割とか人為的としか思えない様な数字をあの頃よく耳にしました。
人間は環境に適応できる生き物ですが、逆に言えば環境に染まり易い生き物であるとも言えます。
大手の訓練環境・運航環境で馴染んだ人達が、外から入って来た人の飛び方を見ると、異物として捉えてしまうのでしょう。
こういった現象が日本の合併時特有のモノなのかは分かりません。
あって欲しくは無い出来事ではありますが、そうなってしまってもショーガナイのかなぁ~と思ってしまう気持ちも無くはないです。
いずれにしても、子会社が親会社に吸収合併される時に子会社の悲哀を感じる人達が一定するいたことは事実です。
そして、今であればJAIRやANA WINGSが親会社に吸収合併される可能性はほぼゼロに見えますが、他のLCCなどと比べれば有り得なくは無いといった感じです。
大手・親会社のパイロットになるメリット・デメリット
メリット
子会社のパイロットは親会社に転職できないが、逆はできないワケでは無い。ほぼいないけど(笑)
説明省略
親会社のパイロットは将来、親会社じゃなくても子会社で〇〇部長とかに成れる可能性が高くなる。
航空会社のパイロット関連の部署は、乗員部、訓練部、審査部に分かれて、それをまとめて運航本部としている事が多い。
そして子会社の運航本部長、乗員部長、訓練部長、審査部長のほとんどが親会社からのパラシュート部隊であることが多い。
親会社での出世争いに惜しくも敗れたゾーンの人達が来ることが多い。
そして、日本に限らないかも知れないが出世争いを長年してきた人達は、一般的に上にこびへつらい下のモノには冷たく当たるタイプの人が多い。と聞いている(笑)
そんな歴史と人柄を持った人が、子会社であるとは言え念願の部長職に付けた暁にどんな態度で社内をウロツクかを想像してみて欲しい。
ということで、色々な子会社に散っている親会社のエグゼクティブの評判は一様に悪い!が残念ながら業界の常識です。
色々グレーだったり、マイナスイオンたっぷりの内容も書いたが、主に会社組織との絡みでの話であって、運航乗務員職自体の楽しさ・素晴らしさが減るワケでは無い。
航空会社じゃなくても親会社と子会社の関係性については、一度近くの大人に聞いてみてね。
大手だと海外の訓練センターでの教官やお目付け役とかの仕事もあり得る。
中小よりもパイロットとして携わる仕事の種類が多いは多い。
それを希望してやらして貰えるかは、かなり薄いけど、、、
デメリット
ANAはコロナ禍の影響を喰らって、訓練待ちが長いらしい
そろそろ結論
3年待ちだと~?? 甘―い!
バブルで長い時は確か6年位あったわ!6年やぞ!干支が反対側いくんやぞ!
小学校1年生が中学校1年生になってボーボーやぞ!
航大行って人によっては教官ツボ引いてヒーヒー言ってたよなぁ~
ゆるい下痢が数か月止まらない、乾いた咳が止まらない、あったよなぁ? いたよな?
航大2年間言われて、コロナでほぼ4年なってもーたりしてるよなぁ~
もうそこで2年間も余計に年喰っとるやん?
既にコロナで2年間という超超貴重な時間が、超超宙ブラリンされてまんがな!
ソレに比べて、身分が保証されて、何のストレスも無い3年が、人生の真ん中チョット手前位にあったってエエヤン!
5年後10年後はみんな嫌でもガンガンに飛ばされんねん!(笑)
下手したら40年位あるパイロット人生の初期の3年くらい羽繕いしたってエエヤン!
イライラせずにドッシリ構えれば、絶対楽しいって、その3年!
僕は生まれ変わってパイロット人生やり直せるなら、20代の3年間は結構欲しいかも!
うん、うん、色々書いたけど、、
それってあなたの感想ですよね?って無言でツッコまれてる気がするけど、
業界の入り口にいる学生さんと、出口も見えきてしまっている僕らの見方・感じ方は違って当然だと思う。
とにかく判断基準になることを思いつくだけ書いたし、今後も思い出したら追加しておきます。
一度、同期と『早く飛びたい』以外の細かい部分に関しても喋ってみるのもイイと思います。
まだまだ言いたいことがある
パイロットは自分で航空会社を作らない限り、雇われの身です。
サラリーマンです。
所詮サラリーマンなので、自分の思い描いたストーリーと違ってくる事が沢山あります。
ありますが、そんな時は多少の事であればグッと堪えています。みんな(笑)
人生とは『選択の連続』なのだとしたら、選択肢は多い方が良い
ココまで書いて来た様に親会社のパイロットの方が少し選択肢が多い感じしない?
選択肢が少ない事による閉塞感、特に転職の選択肢などはパイロット業界では元々少ないけど、そういった閉塞感をより感じずに生きられる。
そして、実際その選択権を行使する人が少ない事から、親会社では大企業である事から来る閉塞感などを感じることはあっても、結局会社に残る選択肢が一番であり続けることが多いのだと思います。
小さな池の大きな魚効果
全く同じ性質・レベルの人が二人いても、レベルの低い集団に属している人の方が優越感を感じながら生活できるので、伸びやすい!という効果です。
ある!といえばあるのですが、コレって性格にも依るよねぇ~
でも、参考にはなる。
『鶏口となるも牛後となるなかれ』
という言葉が今回の記事にドンピシャのコトワザだと感じる人も多いかも知れません。
でも、究極の二択なら鶏口の方がカッコいい感じしますが、本当に二択でしょうか?
【牛の口】になる選択肢を勝手に排除しないでください。
【牛の口】になってください。
子会社行って踏ん反り返って、周りにいる人から苦々しく思われる人を目指さないでください。
結局、入る会社が大手だろうが小手だろうが、まずはその会社で日本一のパイロットを目指して頑張って、少し周りが見えてきたら、その時在籍する会社が少しでも筋肉質で日本社会に貢献できる良い会社になる様に頑張る!が答えであって欲しい。
生涯賃金がどちらが高くなりそう、、、だとか云う不確定で、視野が狭くて、チョット自己中な思考方法は当然あっても良いけど、一度『自分という素材を使って、航空会社を通してどれだけ多く日本社会に貢献できるか?』みたいな観点からも就職先を見て欲しいと思います。
※人事にも了見の狭さは見抜かれるよ
日本の航空業界に1ミリも貢献できていない僕からのお願いです。
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