パイロットに求められるマルチタスクって何?飛行適性って何見てる?

⑧飛行適性検査対策

パイロットに求められるマルチタスクって何?飛行適性って何見てる?

世に言う【マルチタスク】って一体なんなんしょ?

聖徳太子の様に同時に10人の話を理解できた!とか、、、

は実際には無理そうですが、とにかく【マルチタスク】をできる人が凄い人だという常識の素になっている逸話ですよね。

そして、パイロットを目指す学生さんの中にも
『パイロットはマルチタスクができなければイケない』
みたいな考えがいつの間にか浸透していたり、

『こんなことを喋ったらマルチタスクができない人間だと判断されてしまいそうなので、面接では言わない方がいいですかね?』
みたいな疑念?に繋がっているのだと思います。

イキナリ結論!

究極的には【マルチタスク】はやっぱり無理です。神様じゃないと無理です。

10人の話を同時に聞いて理解するのは無理です。

僕は2人でも無理ですし、たった一人でも特に愛妻の話は一生懸命聞いても途中で頭がボヤンとしてきてあまり理解できないことが多いです(笑)

じゃーマルチタスクに見える行為の奥では一体何が起こっているのか? ①自動化

例えば、ギターを弾きながら歌ってる人いますよね?

あれは【マルチタスク】ですよね? でも、あれやってる人は別に神様じゃないですよね?

でも、たぶん、ギターを弾くのが初めての人じゃないはずです。
結構上手くて、目を閉じても弾ける状態、体が覚えている状態だと思います。
歌詞も覚えているかもしれませんし、覚えているというコトは何度も歌って体に染みついているのかも知れません。

だから、【マルチタスク】に見えるコトができるのです。

ある日突然触ったことの無いギターを渡されて、歌詞カードを渡されて、同時にできる人はいないのです。

車の免許はなぜ筆記試験だけで取得できないのか?

車の運転は【マルチタスク】です。【マルチタスク】に見えます。

その車の運転で一番大事なことは周りの状況を認識することです。
道のど真ん中を正確に走行できても、赤信号ではダメですし、先行車がいれば衝突してしまいます。

『子供が飛び出してこないか?』『信号は青から赤に変わりそうか?』『雨が降ってきそうか?』
『後ろの車は自分を追い抜こうとしているのか?』などなどの状況認識が必須です。

もしかしたら、この辺りは実際に車を運転しなくても、最初からできる人もいるかもしれません。
また、助手席歴があればある程度できるハズです。

しかし、車の運転(ハンドル操作やブレーキ操作)は本を読んだだけでは無理です。
やっぱり何時間か実際に運転しないと身につきません。

自動車教習所の目的は、実際に経験しないと身につかない運転技術を体で覚えてもらって、実際に路上に出た時に必要な状況判断をする余裕を作ってもらうことだと思います。

結局【マルチタスク】に見える行為ができる様にするには、ある部分を体に染み込ませて自動化して脳の負担を取り払うしかないのだと思います。

私たちの脳はパソコンの様に【マルチタスク】ができる機能は付いていないのです。

【飛行機操縦訓練】も【自動車教習】と全く同じ

皆さんは自動車免許を取るための教習期間にイメージトレーニングしてましたか?

別に自動車の練習は親に車を借りて空き地で練習することもできますし、教習所での授業も安くは無いですが、ほとんどの人が規定の時間で(追加教習無く)課程が修了できたので、それほど金銭的負担を意識した事は無いと思います。

しかし、飛行機の訓練は時間当たりの費用がメチャ高いです。

しかも、航大・自社養成などのライセンスを取得する為の訓練では追加訓練時間がシラバス上厳しく制限されていますし、同一過程で2回連続して不合格になると訓練自体が完全終了してしまいます。

ですから、訓練生は定められた時間内で絶対に合格できるレベルに技量を伸ばす為に、イメージトレーニングを必死こいてやりまくります。

大変な時・ヤバイ時は寝ても覚めてもイメトレします。
自分の部屋からトイレまで、歩きながらイメトレしながら向かいます。
この時廊下でくっちゃべってる同期連中の話を軽くチェックしますが、クダラナイ内容だとわかった途端にその情報を遮断して、再びイメトレに集中します。
便座に落ち着いた後は、再びイメトレを再開し、無意識で用を足します

こんな感じです。※めっちゃマルチタスク(笑)

しかし、やっぱり、やってる事は自動車教習と同じで、飛行機操縦のできるだけ多くの部分を体に染み込ませて自動化して、上空にいる時の脳をできるだけ状況認識に振り分けられる様にして、短いフライト時間の中での【学び】を最大化しているワケです。

自動化された操作の欠点も当然ある

人間は自動化した作業に関する認知レベルが低くなる様になってます。

休日にいつもと目的地が違うのに、いつも平日通学で使っている電車に乗ったりしませんか?
老人が『朝何食べたっけ?』みたいなのも自動化して食べちゃっているからです。

日常生活のそういった間違いは何回してもいいですが、操縦中の操作はできれば間違いたくないです(笑) 

ですからイメトレで徹底的に自動化レベルまで持って行くことはイイ事ですが、それがある程度定着したら

【自動化しながらも 、操作する瞬間だけは認知レベルを上げる癖をつける。】

とか、

【自動化した操作の合間に、自動化されていない意識的な行為(目線、手の動き、発声、チェックリスト)などを挟んでいって、それも含めてイメージトレーニングをする】

などの方法で自動化に伴うミスを少なくしているワケです。
最初から上手くできる人はいないので、訓練や仕事を通して少しづつソレっぽくなっていくのです。

自動化された操作の流れの中に状況認識力を増す仕組みを入れ込む方法

例えば、離陸直前滑走路に進入する時に気象レーダーのスイッチをONにする手順になっています。

雲一つない晴天時にはコレで全く問題は無いですが、空港周辺に積乱雲が立ちまくっている夏の日には、滑走路へ向かう地上走行中に一時的に気象レーダーをONにして目視で見えづらい雲を発見したり、正確な位置、出発経路への影響を掴みます。

そして、この作業は毎回やらない操作なので、たまに忘れます。
1000回中10回忘れるとして、その10回中1回は雲の影響への対処が少し後手に回って後悔するのです。

他の乗員に聞いてみると、忘れない為の対策を特にしていない人も多いですが、

A:地上走行中に必ずする【コール(発生)】の直後に『気象レーダーの要不要』を一瞬考える。

B:離陸許可を出す管制周波数に切り替わった時に『気象レーダーの要不要』を一瞬考える。

C:離陸走行開始時にライトをつける瞬間に『気象レーダーの要不要』を一瞬考える。

など上記②を上手く取り入れて、より抜けの少ない運航に活かしている人もいます。

普段の生活で言えば、例えば

絶対に誰も入っていないと思う場合でも、トイレに入る時は絶対にノックする。そしてノックしている間に少し意識的に『トイレに誰も入ってないよな?』と考えるようにします。
そして、コレが徹底的に癖になれば、どこのトイレで、どんなに【ウ〇コ】が出そうで焦っている時でも、ノックできますし、『トイレに誰も入ってないよな?』と考えられるので、焦って人が入っているトイレの扉を開けるコトが無くなります。

とか

天気が良い日でも玄関にある傘を触ってから出かけるコトを癖にします。
傘を触っている一秒間は『傘持たなくてもイイのか?俺?』を考える様にします。
コレを徹底的に癖にすれば、どんなに【ウ〇コ】が出そうで焦っている時に出かけようとしていても、傘を触りますし、一秒間は『傘もたなくてもイイのか?俺?』を考えることができます。
この一秒の癖があるお陰で、家を出て、駅のトイレに辿り着く前に大雨に降られて、もっと余裕が無くなって爆発してしまう事が無くなるワケです。 

???? 家で出してから出かけろ??? 正解です。

家から駅のトイレに辿り着く前に爆発するコトを絶対防ぎたい場合の仕組みは
『毎朝、したくても、したくなくてもトイレの便座に座る』になりますかねぇ~

まぁとにかく日常生活まで、こんな仕組みを入れ込み過ぎてる人ってチョットやばいです(笑)

マルチタスクに見える行為の奥では一体何が起こっているのか? ②【スイッチング】

将棋のプロが催し物で素人100人と将棋盤を100面使って対決したりします。
あれが【スイッチング】のゆっくりでわかりやすい例です。

自動操縦を外して小型機などを操縦すると常に【姿勢】【速度】【高度】などがズレます。
それを常に修正し続けながら飛ぶ必要があります。

修正する為に【推力】を変化させますが、その【推力】の多すぎ、少なすぎが原因で上の3諸元がズレたりして、訓練初期は修正しているのか?わざと乱しているのか?みたいなグチャグチャな状態になります。

コレを安定させる方法は簡単に説明すると

第一段階

まず最初に

A:飛行機の計器ではなく、外の地平線を見て水平直線の姿勢を覚える。

次に

B:目安の水平直線時の推力を覚える

第二段階

A:外を見て水平直線の姿勢に合わせる
B:目安の水平直線時の推力にセットする。

C:上昇率・降下率がわかる計器を見て、わずかに上昇降下していないかをチェックする。

D:それに応じて、機内の姿勢儀を見て微妙に姿勢を調整する。

第三段階

A~Dをした後に

E:速度が増えるか、減るかの変化傾向を見て、推力を目安の値から微調整する。

第四段階

A~Eまでの判断を遅滞なく(急ぐことなく)目線をスイッチングしながら、判断して微調整レベルを高めていく。

この時に目線や操作が、A⇒B⇒C⇒D⇒E⇒A、、、の様にはならない。

Aによる情報量が圧倒的に多いので、A⇒B⇒A⇒C⇒A⇒D⇒A⇒E、、、、、の様な目線の移り変わりになります。

更に外部を見るAという行為は、姿勢の大まかな把握だけでなく、雲や他機、着陸前であれば滑走路を見ることによって状況認識する為にも重要になります。

熟練すればするほど、機内の精密な計器を使う比率は2割程度に近づくと言われています。

【スイッチング】の何が難しいのか?

パソコンで調べものをしていたハズなのに、いつのまにかYOUTUBE見てることありますよね?

次にコレやって、その次にアレやって、その次は、、、みたいに考えていないと途中で止まっちゃうのは上空でも同じです。

B,C,Eとかで止まらず、よくわからなくなったらスグにAからやり直す、、、の繰り返しで効率的なスイッチングを習得していくのです。

結局パイロットは【マルチタスク】ができないとだめなの?

【自動化】も【スイッチング】もどちらも演練で身に着けていくモノです。

最初からできる人はいません。
もちろん個人差はありますが、ほとんどの人が習得できる技能です。
演練により【マルチタスク】をしてる様に見える状態に少しづつ近づいていくだけです。

ギターや自動車の運転と全く同じことをやっています。
ギターや自動車の運転ができれば、ほとんどの人ができることなんです。

自社養成や航大三次試験の飛行適性検査は何を見てる?

航空会社も航大もほとんどの人が多少の個人差はあるが、ほとんどの人が【パイロットの仕事】を出来るようになることを世界の中で一番知っています。

ただ、個人差がある中でも、【慌てず、冷静に、できればキレキレに】

現段階で(とういうか生まれながらに?)ある程度本能的にできちゃう人の方がいいなぁ~、、

と思って試験をやっていると思います。

航空大学校の三次試験では

面接と同じ様に、超ダメな人を省く程度の考えでチェックしている感じだと思います。

R4はコロナで飛行適性無くなると思いますが、、、、

だからシュミレーターをいじってもらって、年によっては少し暗算させる程度です。

自社養成の飛行適性は

倍率が高いので、器用そうな人を色々な試験方法でチェックして選りすぐろうとしていますよね?

関連記事:『JAL飛行適性検査』内容と対策【※必読】合格者が超具体的に解説

関連記事:崇城大学航空操縦学(パイロット)専攻入試の【飛行適性検査】はコレだ!

どっちが正しい飛行適性?

極端な言い方をすれば、自社養成の飛行適性検査が一番真っ当というか正しい試験だと思います。

ちゃんと【飛行適性】のみに優劣をつけて点数化しようと考えると自社養成でやっている試験方法になると思います。

民間企業の方が、どうしても全てのことが効率良くなるんです。大体のことは、、、

航大は二次試験の身体検査の耳鼻咽喉の【歩行検査】【足踏み検査】を、未だにアイマスク無しでやってる位ですから、如何に緩いというかお役所的というか、、、がお判りいただけると思います。

まぁそこが航大のイイ所でもあるんですけどねぇ~、、、
結局、卒業時には大きな差は無くなります。
ソコをもっともっと細かくこだわるのが自社養成試験なんだと思います。

そんなに飛行適性が重要か?

飛行適性検査だけで比べると民間企業が上だと説明しましたが、原則的には多少の個人差はあってもほとんどの人が鍛錬によって乗り越えられる壁です。

ですから、自社養成でも航大でも他の試験との比較では、どちらかというと軽視されているのだと思いますし、そうなるのが当然だと思います。

企業でも、学校でも、やっぱり採りたいのは【いい人間・優れた人間】です。
【飛行適性】は決められたシラバスで伸ばすことができますが、【人間力】を伸ばす為のシラバスは無いですから!!

関連記事:自社養成パイロット・航大に【W合格】した学生の持つ資質とは?

ネバギバ敏郎としての【実績】も一度記事化してみました

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