チャイナエアラインCI5240 地上滑走中に雪で滑っちゃった事故 緊急解説
※航空事故とインシデントの定義はコチラをお読みください。
2022年1月末にアメリカのシカゴ空港で着陸後のチャイナエアラインの飛行機(B747)がタキシング中に荷物カートに衝突し、片側のエンジンの1つに損傷を与えたという事故です。
※カーゴなので、お客さんは乗ってません。
アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)の事故調査報告書などが出るのはかなり先になりますので、事故動画と地上滑走の航跡だけで超無責任に予想?解説していきます。
- まずとにかく動画見て
- 地上走行の航跡はこんな感じです
- もう少し時間的に巻き戻してみると
- 事故当時の天候は?
- 乗員は雪氷路面に慣れていたか?
- もしかして、雪でセンターラインのライトが見えなくなっていたのか?
- どの位路面が滑りやすくなっていたか?
- 一般的に滑り出したらどうするべき?
- 最後に楽しく大予想! 前編
- 最後に楽しく大予想! 後編
- オマケ部分
- オマケ①:当該乗員はレベルが低いのか?
- オマケ②:冬季運航ってめちゃくちゃムズイ
- オマケ③:AIRDOやHACを受験するライセンサーの方へ
- オマケ④:チャイナエアライン関連ニュース
- オマケ⑤:747は重心後ろめだったかも??
- オマケ⑥:徹底的にリスク管理できてる乗員は?
- オマケ⑦:そもそも太平洋跨げば離陸時の自重は燃料使い切って三分の二くらいになってる。
- オマケ⑧:そもそも駐機場は除雪の管轄が違う
- オマケ⑨:事故の数日後、まだ事故機は駐機場に置いてあります 動画
- チャイナエアラインを取り巻くチョットした問題:社名変更問題
- チャイナエアラインの有名な事故① 120便炎上事故@那覇空港
- チャイナエアラインの有名な事故② 140便墜落事故@名古屋空港
- 関連ちょっとある記事:なぜチャイナエアラインはボーイング787の16機購入を決断したのか?史上最高益の裏側
まずとにかく動画見て
動画見てどう感じましたか?
乗員はみんな『速いな!なんで?』です。動画が1.5倍速とかでなければ、、、
その疑問はおいて、一旦次行きます。
その他の事故関連サイト
地上走行の航跡はこんな感じです
センターラインを越えて左側に大きくはみ出してぶつかってます。
もう少し時間的に巻き戻してみると
①で一回右にズレて(滑って)ます。
その後
②でセンターラインを行き過ぎて左に行ってガッチャンコしてます。
事故当時の天候は?
ガッツリ省略(笑)
雪があるってだけで十分
乗員は雪氷路面に慣れていたか?
慣れてるワケないじゃん 台湾の会社のクルーだよ! ※勉強はしてます。
もしかして、雪でセンターラインのライトが見えなくなっていたのか?
そんな時は99・9%のパイロットは本能的に止まります。ほぼ無いと思う。
どの位路面が滑りやすくなっていたか?
コレも事故調査委員会の報告まで待たないと良くわかりませんが、
一般的にこんな滑る様な時は、メチャクチャにツルツルで
アイススケートリンクの上を地上滑走しているイメージで遠くないと思います。
一般的に滑り出したらどうするべき?
冬季運航で駐機場に止まる直前も、万が一滑り始めたら危険ですよね?
当然そうならない様に駐機スポット周辺もできるだけ除雪作業を頑張ってしています。
通常は低速度では逆推力(リバース)は使いません。使ってはイケません。
ですが、万が一滑り始めてスタッフさんを引き殺しちゃうかも、、、、みたいなヤバイ場合は、
【一時的に逆推力を使う】
【エンジンを即停止させる】
の2択です。
一度滑り始めたら、ブレーキはほぼ効きません。カーリング状態です。(動画もそうだよね!)
※ジェットエンジンは推力をゼロにはできない。基本前進側に推力でてるし、リバースすると後ろ側推力になる。
自動車のオートマがブレーキ離すと前進するのとチョット似てる!
オートマの車をスケートリンクに置いてブレーキ使えない状態になったらどうする?
エンジン切るしかないよね?
最後に楽しく大予想! 前編
今回は物損だけなので、『不謹慎!』などの非難を恐れずに【楽しく】【無責任に】何が起こっていたのかを予想します。
まず①センターラインから右にズレ始めた段階で、完全にカーリング状態でブレーキ踏んだけど、『効かない!どうしよ?』って思ったハズです。
でもって、基本的に使っちゃいけない逆推力を使うほど、右方に大事なモノがあるワケでも無いので、その時点で
【 全エンジンを即停止させる】
が正解だったと予想します。
カーリングも投げられた後は、暫くは氷上を進みますが、推力は無いのでいつか止まります。
今回もエンジンを全部止めて、路肩にハマって止まる。
⇒それで後で引っ張り上げてもらう。
しか無かったのかもしれません。
それであれば、ドコも壊さず、飛行機も損傷せず、で終わったかも知れません。
最後に楽しく大予想! 後編
①で右に滑ってズレ始めて全エンジンを停止させずに、何したと思います?※予想ですが、、
たぶん、ブレーキが全く効かないので、本能的に右の推力を出して左に曲がろうとしたんだと思います。
そして、それが成功してセンターラインに戻ってこれたのだと思います。
はい、そしてセンターラインに戻ってホッとした瞬間に既にツルツルの路面上でスピードが出ちゃってたんだと思います。
焦って、ブレーキを踏んでも多分それほど先程滑った場所と離れていないですから、同程度にツルツルで全然止まれず、、、、、
だったんだと思います。
オマケ部分
オマケ①:当該乗員はレベルが低いのか?
僕は全然そうは思いません。
レベルが高くは無いかも知れないけど、どの位路面が滑るかは見た目とは全然違います。
氷の上にサラッと乾いた雪が積もると油断しがちですが、結局ツルツルです。
滑りだしたら、ブレーキが全く効かないのでエンジンを切るしかない事も事前にブリーフィングしておかないとイキナリ即判断は非常に難しいと思います。
オマケ②:冬季運航ってめちゃくちゃムズイ
例えばAIRDOとかHACの乗員さんって冬季運航のプロフェッショナルです。
高層の風の予想から、運航する当該空港に雪がいつからいつまで、どれくらい降りそうか?を、気象観測所の予想とは別に自分達で解析します。
運航中は空港周辺の雪雲の入り具合を刻々とチェックします。
短時間的には目視でも雪雲の入り具合をチェックします。
機体への雪の付着度合いを確認します。
燃料タンクの冷え具合は、前便で何時間前まで飛んでいたかに依るので、それも判断基準に入れます。
滑走路の状況、タクシーウェイの状況、ランプエリア(駐機場)の路面状況をそれぞれ確認します。
雪の質(乾いた雪、湿った雪)
気温と降雪の直近数時間の推移(状況によっては前日からの状況もチェック)
防除氷液をかける為の待ち時間を予想する。
駐機場を出てから離陸するまでの混雑状況を予想する。
ちょっと頭に思い浮かんだだけでも、コレだけの事を(通常運航で考えることに加えて)チェックしながら毎日運航しています。
冬の間はお給料倍でもイイくらい(笑)
オマケ③:AIRDOやHACを受験するライセンサーの方へ
全ての苦労・面倒くさいコトが乗員としてのスキル・経験になります。
現場の乗員は絶対喜んで冬季運航してる人は一人もいません。絶対的にリスクなので、、
でも、面接などでは『冬の間だけお給料増やして!』とは言わずに
『乗員として成長できる環境、、、、、』みたいな事を真顔で喋ってください(笑)
ほんと自信付くと思います。
だけど、入社して副操縦士になる為のラインOJTでイキナリ雪降りまくりとかは嫌だよね、、
関連記事:AIRDOのエントリーシートはこう書け!ANAグループ【パイロット就活】 航大・私大(東海、桜美林、崇城、、)
オマケ④:チャイナエアライン関連ニュース
チャイナエアラインの貨物収入、創業以来最高 低温流通は急成長/台湾
カーゴ部門の勢いが事故に繋がったか?(笑)
オマケ⑤:747は重心後ろめだったかも??
重心後ろなイメージは強い。
オマケ⑥:徹底的にリスク管理できてる乗員は?
エンジン全部切ると、最低限の機器はバッテリーで残るけど、暗くなったりする。
※お客さんいたら、客席真っ暗になってビビらせてしまう。
なので、こういった可能性を考慮する神様レベルの乗員は補助電源を着陸後すぐにスタートしておく。
通常は着陸後すぐに使わず、駐機する数分前にかける。
離陸前で長時間のタクシーが予想されれば、その分の燃料も少し考えるかも、その前にそれ以外で燃料UPしてるから要らないと思うけど、、、、
その他はAIRDOとかの乗員さんをTwitterで見つけて質問してくださーい(笑)
オマケ⑦:そもそも太平洋跨げば離陸時の自重は燃料使い切って三分の二くらいになってる。
この便はアンカレッジからダラス行きの便でしたが、離陸前と着陸後の自重は結構違うので、離陸前は重くてなかなか推力出しても進まない感覚が残っているので、着陸後に『お~~結構加速するのねぇ~』は、みんなが感じるコトではある。
オマケ⑧:そもそも駐機場は除雪の管轄が違う
空港は国やそれに準じる組織がシッカリ管理してるけど、駐機場エリアは自分達でやる!的ノリなので除雪は甘いことが多い。
滑走路面のすべりやすさの情報は貰えても、駐機場エリアは計測すらしていない場合がある。
オマケ⑨:事故の数日後、まだ事故機は駐機場に置いてあります 動画
なんかビニールみたいなの掛けられてます。
チャイナエアラインを取り巻くチョットした問題:社名変更問題
「中国の航空会社ではない」 台湾立法院、チャイナエアラインの社名変更議案可決
チャイナエアラインの有名な事故① 120便炎上事故@那覇空港
チャイナエアラインの有名な事故② 140便墜落事故@名古屋空港
事故の後、エアバス社の設計変更に繋がりました。
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